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[町田市の土地家屋調査士・行政書士]

2024年05月07日

【設計業務の標準学習期間】

 資格の取得に標準学習期間○○年という目安があるように、仕事にも標準学習期間のようなものはあります。ただ、仕事に関して、標準学習期間がどれくらいか、という目安を知る機会がほとんどないため、一つの業種を任せられるようになるのに、どれくらいの学習期間が必要か、というのがイメージしにくいところがあります。一般的には10,000時間(約5年)と言われますが、学びの多い職場か否か、知識を吸収するスピードや分からないことを相談できる相手がいるか否か、など様々な要因に起因するので一概に何年掛かるとは言いにくいところがあります。しかし、当たらずといえども遠からずで、お客様の要求水準を満たすレベルの仕事ができるようになるには、やはり10,000時間(約5年)が一つの目安になるのでは、と個人的には思います。
 ただ、設計業務に関しては少し話が変わってきます。不動産登記法などは全国一律に適用されますが、設計業務に関しては、行政ごとにまちづくり条例や構造計算の基準が違うのと、条例の改正が頻繁に行われるため、他の業種に比べて「知識の賞味期限が短い」という特徴があります。また、設計業務には、区割り、造成計画、擁壁設計、擁壁の構造計算など実務経験を積まないと対応できない領域があります。座学と実務経験は車の両輪のため、両方のバランスを意識しながら自己研鑽を積み、競合他社に対抗できるレベルの仕事をしようと思うと、個人的には10年位の実務経験が必要になるのでは、と思います。
 調査士業界には、陸上10種競技の測量という1種目だけに着目すれば、自分の方が測量のクオリティが上回っているので、他の種目に関しても自分がやればもっとできる、という謎の優越感、謎の万能感を持っている人が意外に多いのだが、残念ながら見通しが甘いと言わざるを得ません。
 開発設計だけで食べていける人は、もともとパワービルダーの設計部門で開発設計の仕事を専門に何年もやっていた方や、ワンストップサービスを提供する事務所で開発設計を専門に担当していた方など、いわゆるカテゴリーチャンピョン(その分野1番)の方たちです。設計業務自体が、ルーティン化することが難しい業務のため、1人でひっそりと仕事をしている人も多いのも特徴です。こういった人たちは、開発事業全体工程の中の設計業務の工程だけを専門に、10年以上は実務経験を積んでいる感じがします(あくまでも私の肌感覚ですが)。
 「自分はいままで公共測量を10年以上やってきて出来ないことはなかったので、設計業務に関しても自分がやればもっとできる」という謎の万能感を押しつけてくる人もいますが、公共測量と調査士業務の経験しかない調査士が設計者の土俵で仕事をしても勝負にならないと思います。マラソンランナーが砲丸投げや走り高跳びを専門にやってきた人の土俵で勝負しても実力格差がありすぎて勝負にならないのと同じでです。
 中には、公園で徹底的に測量の練習を積んで、競合他社に負けないような調査士業務の自主トレを積んできた、という人もいるかもしれませんが、競合する設計事務所に負けないよう区割り、造成計画、擁壁設計、構造計算などの設計業務の自主トレを積んできたという人に、私自身いままで会ったことがありません(口先だけの人はゴロゴロいますが)。
 百戦錬磨の不動産会社さんが、資格者の履歴書兼職務経歴書であるホームページやその人の描く図面(土地利用計画図や擁壁設計の図面など)を見れば、どの業者に力があるのかすべて見抜いてくると思います。公共測量と調査士業務の経験しかない人が「同じ人間なんだからやればできる、自分に出来ないことは何もない」と大見得を切って設計の仕事を安請け合いすると信用を失う(私はそのキラーフレーズを聴いた瞬間、その人とは距離を置きます)ので、設計業務で競合他社と同じレベルの仕事が出来るようになるには、10年位の実務経験が必要という認識は持っておいた方がいいと思います。最低限、擁壁の敷設図、展開図、構造図、構造計算書の4つは、お客様に迷惑を掛けないよう、自分がこれまで測量した崖地の現場で、シミュレーションをして出来るようにしておくべきです。
 調査士業界には、設計の仕事は図面を描くだけなので簡単にできるという、誤った認識を持っている人が意外に多いため、「設計業務の標準学習期間は10年位」という個人的な見解を紹介しました。設計者数人に意見を聞き、足して人数で割れば、誤差は薄まるので実情に近づくと思います。

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