その他の手続き

急傾斜地法と土砂災害防止法

 町田市、鎌倉市、横浜市など崖地の多いエリアでは、急傾斜地法の急傾斜地崩壊危険区域と土砂災害防止法の土砂災害特別警戒区域(通称レッドゾーン)が重複して指定されることがあります。平成26年8月に広島市で発生した土砂災害を契機に、土砂災害防止法が改正され、近年、これらのエリアでは急傾斜地法の擁壁が築造されたエリアに、レッドゾーンが重複して指定されるケースが増えてきております。レッドゾーン内ではこれまでの基準(急傾斜地法、建築基準条例)を上回る、厳しい安全基準が設定されているため、これらのエリアで売買する場合、事前の物件調査が非常に重要となります。

 次のようなケースでは、急傾斜地法の頑丈な擁壁が設置されているにも拘わらず、土砂災害防止法のレッドゾーンが重複して指定されることがあります。
(ア)急傾斜地法の擁壁が設置されているのは崖の下部及び中部のみで、擁壁より上部は安全対策がなされていないケース。 (補足説明)擁壁を作った当時は、擁壁より上部も張芝工などの法律の基準に適合した安全対策がなされていても経年変化により、木や竹が生い茂り斜面が安定していなかったり、そもそも安全対策が不十分だったりする場合は、レッドゾーンに指定されることがある。
(イ)崖の斜面の下に待受擁壁+落石防止フェンスが設置されていても、擁壁と崖の間に崩れた土砂を堆積するための空間(ポケット容量)が不十分なケース。
(補足説明)待受擁壁と崖の離隔が不十分だと、崖崩れが起きた場合、崩れた土砂が溢れてしまうので、安全対策が不十分とみなされレッドゾーンに指定されることがある。

 レッドゾーンには厳しい安全基準が設定されているため、レッドゾーン内で建物を新築する場合、一般的には次のような解決策が考えられます。
(1)急傾斜擁壁上部の山林部分に安全対策(法枠工など)をして、レッドゾーンの指定を解除する。
(2)新築する建物と急傾斜擁壁や崖の間に待受擁壁(津波対策で海岸沿いに設置される防波堤のようなもの)を設置する。
(3)崖に面した部分の建物基礎を土砂崩れが想定される高さまで立ち上げ、土砂崩れに耐えうる構造の建物にする。

 しかし、解決策(1)は、擁壁上部の崖は他人の土地になっていたり、工事をするための重機が入っていくスペースがなく、工事代が掛かりすぎるといった問題があります。
 解決策(2)は崖崩れが起きた時に土砂を堆積するための空間を考慮し、崖から離れた位置に待受擁壁を設置することになります。そうなると土地の有効面積が狭くなり、建物を建築できるスペースが限られてくる。また、待受擁壁の最大の問題点として、待受擁壁自体が重すぎで通常の地盤には設置できないという点があります。待受擁壁設置のためには、待受擁壁のみならず、地盤対策工事まで含めた検討が必要です。解決策(3)は土砂崩れに耐えうる構造の建物にするには、建物基礎を厚くする必要があり、基礎を厚くすると建物自体が重くなりすぎて通常の地盤では設置できないという問題があります。この場合も解決策(2)と同様、地盤対策工事まで含めた検討が必要です。

 そうなると現実的な解決策としては、(A)リフォームしてそのまま利用する。(B)レッドゾーンを避けた位置に建物を建築する。ことが考えられます。
 レッドゾーンの指定による建物の構造規制は、新築や増改築する場合に適用される規制で、既存建物の中をリフォームしてそのまま利用する場合には、適用されないので、リフォームしてそのまま利用するというのが現実的です。また、敷地の一部がレッドゾーンに指定されているだけで、敷地の大部分は土砂災害警戒区域(通称イエローゾーンと呼ばれ、建物の構造規制はなく、警戒避難体制を特に整備すべき区域として指定された区域)の場合は、建物の構造規制のないイエローゾーンに建物を新築するという方法も考えられます。

急傾斜地崩壊危険区域内に築造された急傾斜の擁壁について
 この擁壁は土地の境界線に沿って築造されているわけではなく、崖崩れの防止を目的として崖に沿って築造されております。そのため、擁壁が土地の境界線にまたがって築造されることもあり、擁壁工事をする前の図面(役所と取り交した使用貸借契約の図面)をもとに境界の位置を復元すると、急傾斜擁壁の斜面が境界になるケースもあります。
 急傾斜の擁壁が築造されたエリアでは、擁壁が設置された部分を無償で使用を出来るという内容の使用貸借契約が役所と結ばれているのですが、この契約が登記されていない(登記できない)ため、土地所有者様と役所が締結した使用貸借契約の図面がないと境界の位置を特定することが困難です。そのため、急傾斜の擁壁がある土地を売買する場合は、過去に役所と取り交した使用貸借契約の書面をきちんと買主様に引き継ぐことが重要です。
 また、築造した急傾斜擁壁の維持管理のため、U型側溝から1mは工作物を設置できないなど、土地の使用に制限が掛かっていることもあり、この点も注意が必要です。
 当事務所では、土地家屋調査士、行政書士、設計者の3つの視点から多角的に物件調査をすることにより、土地の売却手続きや許認可手続きがスムーズに進むよう皆様のお手伝いをさせて頂きます。

費用の目安 内容による(行政書士業務)
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道路位置指定

 建築基準法では建物の敷地は建築基準法で定められた道路に2m以上接しなければならないとされおります。しかし既存道路に接している部分の間口が狭く奥行きがある土地では、敷地内に道路を新設しないと、奥行きのある土地の有効利用ができないケースがあります。このような場合に築造される道路が「位置指定道路」と「開発道路」です。
 位置指定道路は土地の面積が500u未満の時に築造される道路です。法令に定める技術的基準に適合した道路を新設し、特定行政庁から位置の指定を受ければ、建築基準法上の道路と認められます。位置指定道路は原則、私道ですが、一定の要件を満たせば公道に移官できるケースもあります。
 開発道路は土地の面積が500u以上で、都市計画法の手続きの中で、公共施設の一つとして築造された道路です。開発道路は工事完了後に市に移管されることが一般的ですが、通り抜けのできない袋路状道路は帰属を受け付けてくれない地方公共団体もあります。
(規制の対象となる面積は地方公共団体ごとに異なります)

費用の目安 税込44万円〜(行政書士業務)

工作物確認

 宅地造成等規制区域外で高さ2mを超える擁壁を築造する場合は、建築基準法の「工作物確認」の手続きが必要となります。
 建築基準法では切土や盛土の区別なく高さ2mを超える擁壁を規制の対象としています。
東京都内・神奈川県内で宅地造成等規制区域の指定割合の多いエリア
東京都内…町田市、多摩市、稲城市、八王子市、日野市など
神奈川県内…葉山町、鎌倉市、横須賀市、横浜市、逗子市、川崎市など
費用の目安 税込33万円〜(行政書士業務)
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特定都市河川浸水被害対策法

 一級河川の鶴見川、二級河川の境川及び引地川の流域で1,000u以上の雨水浸透阻害行為(雨水の流出増をもたらす行為)を行う場合、都道府県知事(または市長)の許可を得る必要があります。
(鶴見川は平成17年4月1日、境川と引地川は平成26年6月1日から特定都市河川浸水被害対策法の適用流域です)
許可を必要とする雨水浸透阻害行為は次のようなものです

【1】耕地、林地、原野等を「宅地等」にするために行う土地の形質変更
【2】土地の舗装
【3】排水施設を伴うゴルフ場、運動場の設置
【4】ローラー等により土地を締め固める行為

 なお、特定都市河川浸水被害対策法では、宅地等以外の土地の行われる行為のみを規制の対象としており、既存宅地等における雨水浸透阻害行為については許可の対象から除外されております。宅地から宅地に変更しても雨水の放流量は増加しないからです。
特定都市河川流域の地方公共団体
鶴見川流域:横浜市、川崎市、町田市、稲城市
境川流域:横浜市、相模原市、鎌倉市、藤沢市、大和市、町田市
引地川流域:藤沢市、茅ヶ崎市、大和市、海老名市、座間市、綾瀬市
特定都市河川浸水被害対策法の適用流域内では次のような規制や努力義務などが設けられます

【1】流域内の住民・事業者は雨水を貯留浸透させる努力
【2】新たに雨水浸透阻害行為(面積:1,000平方メートル以上)を行う場合の許可の取得
【3】既存の雨水の流出抑制機能をもつ防災調整池の保全

 市街化の進展した都市部では河川の拡幅や、堤防の嵩上げなど大規模な公共工事の実施が困難であるため、民間事業者に雨水浸透貯留施設の設置を義務付け、開発行為によってもたらされる雨水の流出増を抑制するというのが基本的な考え方です。
 特定都市河川浸水被害対策法とは別に、地方自治体が独自に浸透施設に関する基準を設けている場合は、両方の基準を満たした施設を設置する必要があります。地方公共団体の中には対策貯留量600㎥/haなどの厳しい基準を設けているところもあります。

費用の目安 税込66万円〜(行政書士業務)

その他開発業務に付随する手続き

 【農地法】【風致地区条例】【文化財保護法】【道路法】【下水道法】などの開発業務に付随する手続き(行政書士業務)についても取り扱っております。なお、これらの許認可手続きを土地家屋調査士が代理人として行うことは違反行為に該当するため、行政書士が代理人として行います。ダブルライセンスやトリプルライセンスに否定的な見方をする方もいますが、こういった手続きを代理人として行うには、行政書士資格が必要です。
造成後
植栽

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  • 土地家屋調査士・行政書士 石原事務所