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土地家屋調査士・行政書士 石原事務所
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【コネなしで独立を目指す方々へ】

 45歳定年制、雇い止め、リスキリング(という名の雇用の流動化)など社会を取り巻く環境は、年々厳しさを増しております。
 最近は、大企業をリストラされて士業で独立を目指すといった話も耳にするようになりました。年齢的に再就職は厳しく、士業での独立を検討せざるを得ない方は、独立して家族を養えるか、これまで通り住宅ローンを払い続けることができるなど、悩みは尽きないと思います。しかし、士業で独立することを安易に考えない方がいいと思います。ネットで情報発信する人には独立して軌道に乗った人が多いため、得られる情報がプラスの情報に偏っており、マイナスの情報について得られる機会が少ないからです。資格を取得しても独立せずに、会社のなかで燻っている人や数年で廃業を余儀なくされた人は、プライドを捨ててまで情報発信などしません。独立してもうまく流れに乗れず、こんなはずではなかったと後悔しないためにも一部の成功者の発信するプラスの情報だけでなく、マイナスの情報についても調べた上で、独立を検討すべきです。
 はじめに、士業は陸上競技の10種競技と同じです。資格を取得しても10種競技の1種目にすぎない資格という種目で努力したことの証にしかなりません。資格を取得しただけでは食べていけないと思います。「測量」「境界立会」「表示に関する登記」「宅地造成設計」「擁壁の構造計算」「開発などの許認可手続き」「農地法」「相続」「家族信託」「成年後見」「税金」「経験」など他の種目でも実力を身につけないと、お客様の様々なニーズに対応することができないからです。
 次に、資格を取得しても、実務経験を積む機会がほとんどないという現状があります。土地家屋調査士においては、1人で測量できるワンマン測量機が普及している関係もあり、最近は求人の募集自体も昔に比べ減っている印象があります。労働環境がいい職場は人がほとんどやめないため、頻繁に求人募集している会社には何らかの裏事情(後輩潰しをするベテランがいる等)があるのかもしれません。行政書士に至っては求人自体がほとんどありません。雇う側としても自分の仕事の時間を犠牲にして、資格を取得したので実務経験を積みたいという人に、手取り足取り仕事を教えている時間が取れないという実情もあります。
 また、運良く実務経験を積める事務所が見つかっても、分業スタイルでやっている会社で学べることは、全体工程の中の一部分に過ぎません。一例を挙げると、開発などの設計業務においては次のような知識や経験が必要です。@確定測量や現況測量などの土地家屋調査士として知識 A区割りや造成計画を考える設計者としての知識 B崖地のエリアでは擁壁の構造計算や地盤に関する知識 C役所に許認可手続きを申請する行政書士としての知識 D法務局に登記申請をする土地家屋調査士としての知識 これらの手続きを1から10まで1人でこなせるようになるには、「測量会社」「調査士事務所」「設計事務所」などでそれなりの下積み経験が必要になります。
 さらに、独立して長くやっている方々は、これまでにややこしい案件を解決したり、お客様のわがままを聞いたり、不動産の買い手や売れ手を紹介してもらったりと、お客様が恩義を感じるような「信用ポイント」のようなものをたくさん持っています。たくさん買い物をすればたくさんのポイントがたまるのと同じで、信用を売りにする士業において、創業○○年の実績という売りは、お客様に安心感を与えることができる重要な要素です。先代が築き上げてきた「信用ポイント」やコネクションをそのまま引き継げる恵まれた環境にある人と違い、「信用ポイントゼロ」のコネなしの新人が創業○○年の事務所と渡り合っていくためには、「信用ポイント」なんか目じゃないくらいの、なんらかの売りをつくる必要があります。
 若い人であればスピードを売りにして、相場よりも安い料金設定にして数をこなせばやっていけるのかもしれませんが、年を重ねるごとにスピードでは勝てなくなります。そうすると、コネのない人は、複数の役割をこなせる多能工化(マルチスキル)するという方法が考えられます。大きな声では言えないが、自分の専門分野に閉じこもって全体を俯瞰する努力を怠っている人が多数派です。調査士+司法書士のダブルライセンスで登記手続きをワンストップで提供できる人や、調査士+土木設計+構造計算+行政書士の組み合わせで設計業務をワンストップで提供できる人は少数派です。だとしたらダブルライセンスやトリプルライセンスで複合的な知識が必要とされる仕事をワンストップで提供できるようになれば、コネなしで独立しても軌道に乗って「めでたしめでたし」という風になるのでは、と思われるかもしれませんが、話はそんなに簡単ではありません。
 御多分に漏れず資格業界も嫉妬の渦巻く業界だからです。人と違うとこをしたり、人にできないことができたりすればすぐに足を引っ張られたり、悪口を言いふらされたりします。勉強して自分の商品価値を高めるというプラスのベクトルを持った人を、経験の上に胡座をかいて勉強もせずに他人の批判ばかりを繰り返すマイナスのベクトルを持った人がしつこく足を引っ張ってくるという現象は、どの業界でも観察されるのではないでしょうか。人間に限らず動物のオスの遺伝情報には、自分の縄張りの中に力のあるオスが侵入してきたら攻撃して追い払うようプログラムされているという説もあります。コネのない人は10種競技の合計得点で他の業者を上回っていく必要があるが、そんなことをすれば妬み嫉みの標的にされて足を引っ張られるという二律背反のなかで仕事をしなければならないつらさがあります。
 勉強して自分の商品価値を高めるというプラスのベクトルを持った人と、自分のことは棚上げして他人批判を繰り返すマイナスのベクトルを持った人がわかり合えることはないので、できるだけマイナスのベクトルを持った人とは距離を置いた方がいいと思います。マイナスのベクトルを持った人か否かを見極めるリトマス試験紙は「相手の土俵に上がって白旗を上げる度量を持った人か否か」です。陸上10種競技で長距離走を専門にトレーニングを積んできた選手が、やり投げや砲丸投げなど他の種目を専門にトレーニングした選手の土俵で勝負しても、勝てないのは誰でも分かると思いますが、この業界(私の周りだけかもしれませんが)には、自分の専門分野以外の分野(設計業務、構造計算業務、行政書士業務など経験、知識、実績が何もない分野)で「同じ人間なんだからやればできる、自分にできないことは何もない」と言ってマウントを取りに来る人がいます。周りの人を蹴落とすことによって相対的に優位に立ちたい、楽して自分の評価を高めたいというタイプの人です。このタイプに粘着されてしまうと、こちらが関わりたくないにも拘わらず、ストーカーのようにしつこく付きまとって来て、人の悪口を言いふらしたり、人の足を引っ張ってくるので、「相手の土俵に上がって白旗を上げる度量を持った人か否か」というリトマス試験紙を使って陽性と判断した場合は、徹底的に距離を置いた方がいいと思います。足の引っ張り合いや悪口の言いふらしに時間を割く位なら、陸上10種競技の他の種目でも実力を身につけた方が、自分の商品価値も高まり、お客様に対する貢献度も高めることができるからです。「言っていることではなく、やっていることがその人の正体」と言われます。自分の知識や技術を磨く努力もせず、他人の悪口を言いふらす、足を引っ張る、気に入らない人を貶めるために落とし穴を掘る、これが人の足を引っ張るマイナスのベクトルを持った人の正体です。

ここまでがあまり出回らないマイナスの情報についての紹介になります。ここからはプラスの情報について紹介します。

 士業で独立する一番のメリットは、精神的なストレスから解放されることです。前例踏襲、絶対服従、トラブルが起きたときのトカゲの尻尾、間違っていることを間違っていると指摘できない理不尽さなど、大きな組織独特の息苦しさに苦しんでいる方が独立した場合、おそらく仕事上のストレスは10分の1以下に低減されると思います。
 また、勉強するテーマや仕事をする領域を人からの指示ではなく、自分で決めることができるので、自学自習の習慣が身についている人にはおすすめできると思います。士業には、学習歴社会(学歴ではない)という側面があります。自分の知識や技術に磨きをかけて学習歴を高めていけば、おのずと相談できる仕事、任せられる仕事の種類も増えてくると思います。相続業務と土地家屋調査士、設計業務と土地家屋調査士のように親和性の高い領域で学習歴を高めていけば、コネがなくても食いっぱぐれることは少ないと思います。独立競争というマラソンレースに後から参入してくるので、スタートの時点で学習歴に格差があるのは当たり前です。自学自習の習慣が身に付いている人であれば、先にスタートをした人たちに追いつくことは可能です(但し、それなりの時間は掛かりますが)。効率的に学習歴を高めて行くには、できるだけ使用頻度の高いテーマを優先して勉強していく必要があります。一例を挙げると、崖地の多いエリアでは「宅地造成等規制法(盛土規制法)」「都市計画法」「土砂災害防止法」「急傾斜地法」「各行政の建築基準条例(がけ条例)」「各行政のまちづくり条例」「擁壁の構造計算と擁壁設計」「地盤調査と地盤改良」「道路位置指定」「工作物確認」「浸透施設の設計」「区割りと造成計画を考える設計力」「青地の境界確定と払下げ手続き」「次の工程(設計)に配慮した現況測量」などが使用頻度の高いテーマとして挙げられます。一つの業種で実力を身につけたらそこで胡座をかいてしまう人が多く、崖地のエリアで使用頻度の高い、これらのテーマで学習歴(標準学習期間については別の機会に紹介したいと思います)を高めていけば、コネがなくても食いっぱぐれることは少ないと思います。ただ、崖地のない平らなエリアでこれらの知識や技術を磨いても自分の収入増、評価増には結びつかないので、平らなエリアで開業する場合は、開業する地域の特性に合ったテーマを選ぶ必要があります。
 あとは自分の得意な土俵を選べるのもメリットになります。適性を欠く能力を鍛えても並にしかならないと言われます。会社からの指示で自分の苦手な土俵(適性を欠いたり学習歴がない仕事)で仕事をしても結果には結びつかないし、ストレスも溜まる一方です。しかし、自分の得意な土俵で、使用頻度の高いテーマを優先して学習歴を高めていけば、合計得点が高まっていくことも実感できますし、ストレスもあまり溜まりません。独立した時と会社勤めしていた時とでは、疲労度が全然違います。これも士業で独立するメリットの一つです。
 
ここまでがプラスの情報についての紹介となります。【デメリット】と【メリット】をまとめると次のようになります。

【デメリットのまとめ】
・資格を取得しても実務経験を積める機会が非常に少ない。
・運良く就職先が見つかっても、そこで学べることは全体工程の中の一部分に過ぎないため、1から10まですべてこなせるようにはならない。
・長年やっている方々はたくさんの「信用ポイント」を持っているため、コネのない人は陸上の10種競技と同じで、合計得点を高めていく必要がある。
・何らかの売りがあれば食いっぱぐれることは少ないが、嫉妬深い人に粘着されてしまうと、悪口を言いふらされたり陰湿な嫌がらせを受けることがある。

【メリットのまとめ】
・前例踏襲、絶対服従、トラブルが起きたときのトカゲの尻尾、間違っていることを間違っていると指摘できない理不尽さなど大きな組織独特の息苦しさから解放される。
・士業には学習歴社会(学歴ではない)の側面があるので、自学自習の習慣が身に付いている人であれば、相談できる仕事や任せられる仕事の種類を増やすことは可能。
・自分の強みの発揮できる土俵で仕事ができる。苦手な土俵で仕事をするのとでは疲労度が圧倒的に違う。

 地盤・看板・カバンなし、余所者なので地元の友達がいない、といった私と同じ境遇の方に向けて考え方の一つを紹介しました。士業で独立する場合、プラスの情報だけでなく、マイナスの情報についても提供するインフォームドコンセントのようなシステムがないため、コネのない人はコネのある人に比べ、少ない判断材料だけで独立の決断をしなければなりません。資格学校や一部の成功者の発信するプラスの情報だけを鵜呑みにし、独立してみたが流れに乗れず、数年で廃業というパターンが土地家屋調査士にも、行政書士にも散見されます。本業以外の税制面においてもインボイス制度や電子帳簿保存法などの施行により、以前よりも新規参入のハードルが上がっております。また、先代の築き上げた信用ポイントやコネクションという手札を持ったコネのある人に比べ、コネのない人はスタートの時点でかなりの差がある状態で開業しなければならないという現状は知っておくべきです。マイナスの情報を発信すると、これから参入してくる人のやる気を挫くな!と叩く人もいますが、独立してうまくいかなかったときに、その人が責任を取ってくれるわけではありません。マイナスの情報を発信する人を「ドリームキラー」の一言でバッサリと切り捨てるのではなく、プラスの情報を発信する人、マイナスの情報を発信する人、どちらの発信する情報にも一理ある(といいますか、その人が置かれたきた環境(環境ガチャ)での経験を語ったいるのでどちらの主張も正しい)と思うので、両者の意見を「足して2で割る」くらいの感覚で参考しにして頂ければ、誤差はそれほど生じないと思います。
 コネなしでこの業界に入った私が独立当時に知っておけばよかったという情報(士業は陸上の10種競技と同じなので合計得点を高める、人の足を引っ張るマイナスのベクトルを持った人とは関わってはいけない)をコネのない方々ヘ向けて「転ばぬ先の杖」としてまとめたもので、同業者に向けて書いたものではございません。なので、同業者の方が読んだ場合、気分を害される部分もあると思いますが、すべてスルーしてください。

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